第八話
ネクストステージ

 あまりにも、印象は違っていた。
 
 立派で、それでいて、近づきがたい。
 そんな印象は、すぐに消えてしまった。

 軍という特殊な環境にいる彼らが、普通の少年と同じように笑い、怒り、生活している事が、意外といえば意外で、そして、当たり前といえば、当たり前だっ た。

 
 『軍ってのはね、人を助けるためじゃないんだ、……殺すためにあるんだよ』

 
 初めて人を殺した日、兄は一言、そう、呟いた。
 
 兄はその日、間違いなく自分とは違う世界に行ってしまった。
 達観したような、それでいて、もの淋しそうな、そして、どこか恐怖で怯えているような表情。

 
 
 この基地にいる彼らは、一体どれほどの命を奪い、そして、失ってきたのだろう?
 
 生き残れ、隊長の言葉には、どれほどの意味が込められていたのだろう?
 
 楽しげに笑っている彼らの、心の奥底にあるものは、一体何なのだろう?

 
 ただの憧れでなく、仲間として、生身の彼らに触れた、僕の心の中に残ったのは、その疑問だった。


 
 いずれ、間違いなく、自分も人を殺す日が訪れる。
 そして、もしかしたら、仲間を失う日が訪れるかもしれない。

 その時になれば、僕も、兄や、彼らの気持ちが、果たしてわかるようになるのだろうか……。

 
 それが一番の楽しみでもあり、そして…………一番の恐怖でもあった。

  
 序章 第八話 完
 
2005年12月30日 掲載